社會福祉法人 よつ葉の會 サービス管理責任者 伊倉 公美さん 社會福祉法人 よつ葉の會 サービス管理責任者 伊倉 公美さん

社會福祉法人 よつ葉の會
サービス管理責任者

伊倉 公美さん

KUMI IGURA

社會福祉學部 2009年卒業
靜岡県/靜岡県立御殿場南高等學校

人の笑顔は、人を笑顔にする。
それは障害があってもなくても、
変わることのない事実。

障害のある人のことを、私たちはどれだけ理解しているだろうか。
障害者も健常者と同じように、楽しいことを楽しいと感じるし、
表現することに喜びを感じるし、誰かを笑顔にできるとうれしい。
たったそれだけの気づきが、物事をプラスに変える。
障害者が地域に溶け込み、私たちと身近に接することで、
私たちはもっともっと寄り添える。
違いを越えて、私たちは手を取り合うことができる。
伊倉公美さんは、そう考えている。

「よさこい」が取り払った心の壁。

入職して1年が経った頃のことでした。理事長から、「よさこいのグループを立ち上げてほしい」と依頼されました。就職面接の際に私が大學で「よさこい」をやっていたと伝えたことを覚えていたんです。以前からこの施設にはダンスグループがあり、利用者さんとしても思いを表現する場を求めていました。しかし、その立ち上げは大変でした。まずは、「よさこい」とは何かを、利用者さんにも、職員にも理解してもらわなければならない。大學時代に所屬していたサークルの後輩にお願いして、演舞を披露しに施設に來てもらったり、當時のつてを頼って「にっぽんど真ん中祭り」の資料を取り寄せたり。とはいえ、初めての舞臺は、利用者さんにとって初めて大きなステージで発表する経験だったので、失敗もいろいろ。初年度は「出演できるだけで、100點!」と思おうと考え、利用者さんが一生懸命、舞臺に立てた姿を見ることができるだけで十分でした。

しかし、反響はとても大きかったです。利用者さんの保護者の方からは「今まで以上に思いを伝えてくれるようになった」という嬉しい報告があったり、利用者さんの生活が安定して寢坊をしなくなった、など、プラスの変化が見られるようになったのです。さらに、地域の方からも「踴りをやっているのよね」と聲をかけてくださることも増え、出演依頼まで舞い込むようになりました。

一緒に「よさこい」をやったことがある地域の小學生は、「こんにちは」と元気いっぱい挨拶をしてくれます。みんななんの隔たりもなく、接してくれます。

「よさこい」を通じて生まれた縁が、障害に対する壁を自然に取り払ってくれたのではないかと思っています。

「ふくし」の対象は、
“一人”じゃない。

中學生の頃、福祉施設でボランティアを體験しました。そこで、利用者の方が、喜ぶ時は100%喜び、悲しむ時も100%悲しむ姿を目の當たりにして、「素敵だな」と感じました。感情を全力全身で伝えてくれる人たちとの出會い。それが、日本福祉大學に進もうと考えたきっかけです。

4年間、日本福祉大學で「ふくし」を學び、そこで感じたのは、「ふくし」の奧の深さ。私の目の前にいるのはたった一人の利用者だったとしても、その後ろには、いろんな背景があって、家族だったり、地域だったり、社會だったりが複雑に絡み合い、その人の人生に影響を與えています。その背景やつながっている人のすべてを受け止めつつ、支援をしなくてはなりません。「ふくし」を提供する対象者を起點に、その広がりのすべてを見ること。それこそが、「ふくし」の難しさであり、面白さかもしれません。

この気づきが得られたのは、大學時代の実習です。知的障害者の入所施設を體験したのですが、職員さんからご家族の様子を聞き、ご家族ならではの苦労も知ることができ、「利用者さんだけではなく、ご家族をはじめとするさまざまな要素が絡み合っていること」を知ったのです。また、そこの職員さんたちは、素晴らしいチームワークで、頻繁にコミュニケーションを取り合いながら、利用者さんを支援していました。支援する側も、決して一人ではできないことを痛感した実習でした。

無施錠の入り口ドアが象徴するもの。

今の職場である「よつ葉の會」は、ゼミの先生にご紹介していただきました。正直、迷いはあったんです。「ふくし」とは関係ない仕事への興味もありましたし。しかし、この施設を訪問して、まず「明るくていろんなことができそうだな」と、感じました。地域とともにたくさんのイベントを開催していて、地域に開かれているという印象もありました。さらに、ここで働く人たちは、皆さん仕事の大変さをみじんも感じさせない明るさを持っていました。この施設で働くことを決意するのに、そんなに時間はかかりませんでした。

そうそう、入り口の自動ドアはいつも無施錠なんです。これは障害者の施設では、ちょっと珍しいことかもしれません。もちろんそのために支援者がずっと利用者さんを見守っていたり、大変なことも少なくありません。こんなところにも、扉を開いて、利用者が地域に溶け込み、幸せになってほしいと願う、この施設の理事長の想いが込められているのです。

みんなが幸せになる社會の実現へ。

よさこいグループを率いることで、私自身、メディアに取り上げられたり、出演依頼をくださった方に私たちの活動を説明したりする機會が増えました。そこでは、「知的障害者とはどんな人たちなのですか?」と聞かれることも多くあります。私は「車椅子の方が足に障害があるのと同じように、知的に障害のある人です。けれど、私たちとの違いはそれだけで、あとは私たちと何も変わらないんですよ」と伝えています。彼らも自分の思いを伝えることができるし、「よさこい」で自分を表現することだってできる。幸せと感じることは、健常者の方と同じです。障害者も同じ幸せをめざす社會の一員として、もっと世の中に溶け込んでいくべきではないでしょうか。その先に、「ふくし」が追い求める「みんなが幸せになる社會」の実現があると信じています。

もちろん、まだまだ課題は山積みです。私は、障害に対するイメージをマイナスからプラスに変えたいと思っています。障害者に関わることは、おしゃれで楽しくて、明るくてかっこいい。そんな風に思ってもらえるようになったら、きっと、これからこの業界で働こうと考える後輩たちも増えていくことでしょう。そのためには、まずは支援する私自身が豊かで、元気いっぱいでいなくっちゃ。困難なことがあっても、周りの力を借りながら、しなやかに前向きに、障害者支援に取り組んでいきたいと思います。

Editor’s Note

「もっと、若い世代が活躍できる世の中になるといい」。世の中の課題について聞くと、伊倉さんはこう答えた。
「きっと、困難を解決するためには、物事のプラスの側面に著目すべきで、マイナスをプラスに変換させる柔軟さは若い世代のほうが、得意だと思うから」と。
たしかに、課題に直面した時、人はリスクを考えがちだ。今まで通りでいい、変えないほうがいい、と。しかし、プラスにとらえる、未來は良くなると信じる。そして、アイデアと工夫を凝らして課題にアプローチをして、マイナスをプラスに変換する作業自體を楽しんでしまう。そのためには、自分自身に、「しなやかさ」が必要だろう。視野を狹めてはいけない。自らの世界を狹めてはいけない。心のあり様は、どこまでも自由で、どこまでもしなやかであるといい。もしかすると、それを年齢に関係なく、「若さ」というのかもしれない。
中學時代の伊倉さんは、障害のある方が100%で向き合ってくれる姿に、自由としなやかさを見ていたのだろうか。

※掲載內容は2020年12月取材時のものです。

今は、コロナウイルスの流行の影響で、なかなか行けませんが、島巡りが好き。自転車に乗って、気の向くままに散策をして、心に留めたいと思った瞬間を寫真に収めて……。島特有のゆったり流れる時間が好きなんです。思う存分パワーチャージができたなら、仕事も頑張れます。オンとオフのバランスを取りながら、すべての経験を「ふくし」の現場に活かしていきたいです。

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